武田幸三、引退
昨日会場で観戦し、今日改めて録画を観ました。
武田は、1ラウンドに被弾したパンチですでに片眼が見えなくなっていたそうです。武田がローキックでダウンするという“ありえない”光景も、見えていないキックを受けたからでした。
そうやっていろんな事実を積み重ねて、武田のファイターとしての闘いが完全な敗北で終わったことを整理しようと思うのですが、やっぱり今でも寂しいし、悔しい。
録画で改めて見た、尻餅をつくようなダウンの時に見せた武田の魂の抜けたような表情。これまでに見たことのないようなものでした。短い試合のあちらこちらから、武田の引退がもう必然であったことが伝わってきます。
2005年に行った左眼の手術後も、やはり完全には回復していない視力。年齢も30代後半になり、体力の衰えも感じていたでしょう。身体はとっくにボロボロで、それでも自分を求めるお客さんがいるなら、とリングに上がり続けてきた武田ですが、それを支えてきた心の変化が、武田をリングからついに解放することになりました。
K−1MAXの柱として“引退ロード”が周到に用意されてきた魔裟斗とは異なり、武田の引退発表からラストマッチまでの時間は短かった。しかし、ここ数年の武田を観てきた者には、武田がいつその決断をしてもおかしくはないということは充分すぎるほどわかっていました。
それでももう少し、武田の試合を味わいたかったという気持ちと、
十分闘った、お疲れさま、という思いが共にあります。
試合後に武田を抱え上げたアルバート・クラウス。
花道を帰る途中で武田の手を挙げた師・長江国政。
それを見つめる周囲の人々のなんともいえない表情。
一つ一つが心に沁みてきます。
事象だけ取ってみれば惨敗。
この上なくカッコ悪くて、痛々しく、そしてそれ故に武田らしい、余韻の残るラストマッチでした。
今はただ拍手を送るのみです。
ありがとうございました。
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コメント
私は偶然この試合の一部を翌朝のテレビで見ました。
「生きて家族の元に帰れるのがうれしい」
という最後の言葉は、ある種似た経験を持つ私の心に沁みましたねえ。惨敗の引退試合を自分もファンも喜ぶことができるとは何と幸せな事でしょうか。長年のファイトを称えるかのように持ち上げたクラウスもよかった。
投稿: グン( ´兄`) ノ | 2009年10月28日 (水) 23時28分
予備知識のない方でも引きつけるものが、武田の試合や言葉にはありますね。
>惨敗の引退試合を自分もファンも喜ぶことができるとは何と幸せな事でしょうか
まさにおっしゃる通りだと思います。
ありがとうございました。
投稿: モトハシ | 2009年10月29日 (木) 19時56分